05 備前焼

1000年の歴史を持つ焼物。

1000年の歴史を持つ焼物。 我が国で中世から生産を続けている、代表的な6つの焼物(瀬戸・常滑・丹波・越前・信楽・丹波・備前)を「日本六古窯<こよう>」と呼びます。その一つ、岡山県備前市を産地とする備前焼は、良質の陶土を用い、釉薬をかけず、高温で焼き締めるのが特徴で、1000年の歴史を持っています。 そのルーツは古墳時代の須恵器<すえき>にさかのぼり、平安時代頃までに皿や碗、瓦などが焼かれるようになっていました。丈夫なことから日用雑器として重宝され、鎌倉時代には壺や甕<かめ>、すり鉢などが多く作られます。また、室町時代末期にわび茶が隆盛すると、質朴な風情が茶人に愛され、茶陶器作りも行なわれます。江戸時代には、藩の保護・統制の下で大規模な共同窯が造られ、置物などの装飾品も焼かれました。 そうして、長らく人々の暮らしに根づいていた備前焼ですが、明治から昭和初期には、安価で大量生産できる磁器に押されます。しかし、そんな中にも、備前焼の芸術性を高める動きが現われ、昭和31年に金重陶陽が人間国宝(重要無形文化財保持者)に指定されます。それに続き、藤原啓、山本陶秀、藤原雄、伊勢崎淳と、多くの人間国宝が誕生しています。 現在、ベテランから若手まで多くの作家により、多彩な備前焼が生み出され、国内のみならず海外でも注目されています。


土と炎が生み出す芸術。

土と炎が生み出す芸術。 備前焼は、備前で取れる原土「ひよせ」を中心にした土作りから始まり、成形・乾燥の後、主に登り窯を用いて、1200℃以上の高温で2週間前後焼かれます。高温で焼き締めるために堅く、昔から「投げても割れぬ」と評判でした。 備前焼といえば赤褐の焼き肌が特徴ですが、窯変によって多彩な表情を見せてくれます。たとえば、「胡麻」は、焼成中に燃料の松割木の灰が作品に付着し、胡麻のように見えるもの。また、窯の中で炭に埋もれるなどして、直接炎に当たらなかった部分が灰色を呈したものを「桟切り <さんぎり>」と呼びます。そのほか、作品を重ねて炎を当てず、赤く発色させる「牡丹餅」や、重ねて焼くことで上下の焼き色が異なる「伏せ焼」、作品に巻いた藁の成分と土の鉄分が化学反応を起こし、緋色の線が現われる「緋襷<ひだすき>」、いぶし焼きで青灰色に発色する「青備前」などの技法があります。 備前焼は、無釉で焼き締めるため、表面に微細な凹凸があり、内部にわずかな気孔ができます。そのため、「ビールを注ぐときめ細かな泡が立つ」「酒の熟成効果が期待される」「水が腐りにくい」などと言われます。


焼物の町・備前市伊部。

備前焼の窯元が集まる備前市伊部。中でもJR赤穂線伊部駅周辺には、多くの窯元が工房を構え、ギャラリーやショップを開いています。普段使いにぴったりの手頃な価格の器から、人間国宝など作家の逸品まで、さまざまな備前焼に出あえるほか、土ひねり体験などもできます。 また、JR伊部駅そばの岡山県備前陶芸美術館と備前焼伝統産業会館でも、古備前から現代に至る作品と備前焼に関する資料の展示や販売をしています。 毎年10月第3日曜とその前日の土曜に開かれる「備前焼まつり」では、作品が割引で販売されるなど、多くの焼物ファンで賑わいます。

ページの先頭へ戻る