03 ばら寿司
岡山名物、豪華な「ばら寿司」。
酢飯にさまざまな具をのせたり、散らせたりする「ちらし寿司」。岡山では、これを「ばら寿司」と呼びますが、一般のちらし寿司に比べるとかなり豪華なもの。県内でも地域や家庭によって多少の違いはあるものの、基本的には煮しめたカンピョウやシイタケなどを細かく刻んで酢飯に混ぜ、何種類もの具材を飾り付けるもの。その具材は主に、サワラ、ママカリ、タコ、イカ、エビ、アナゴ、モガイ、ニンジン、レンコン、エンドウ、シイタケ、カンピョウ、高野豆腐、錦糸卵などで、酢締めにしたり、甘辛く煮含めたり、一つ一つ丁寧に味付けします。魚の漬け酢と具を混ぜ込んだ酢飯のまったりした味わいも、ばら寿司の特徴。気候が穏やかで、山海の恵みが豊富な岡山ならではのごちそうです。「ばら寿司」は、岡山・倉敷市内をはじめ県内の多くの寿司店・和食店で味わうことができます。
庶民の知恵が生み出したごちそう。
今でも祭りやお祝いの時に家庭で作られるこの「ばら寿司」は、江戸時代の岡山城下で誕生したという説が有力です。岡山藩初代藩主で、名君として知られる池田光政公は、質素倹約を奨励し、庶民にいろいろな贅沢禁止令を出しました。その一つが「一汁一菜令」、つまり汁物とおかず一品に限るというもの。これに対して庶民が知恵を絞り、一品でも豪華なものをと考えたのが「ばら寿司」といわれます。かつては寿司桶の底にさまざまな具材を敷き、上に酢飯をのせて隠して質素に見せておき、食べる直前にひっくり返したとか。
ママカリとサワラ。
「ばら寿司」の具材には、瀬戸内海の魚介が豊富に用いられていますが、中でもママカリとサワラは二大名物といえるもの。
ママカリ(サッパ)は、「あまりにおいしいのでご飯が足りなくなり、隣から飯<まま>を借りて来るほど」が名前の由来。安価なこともあり、昔から岡山ではよく食べられてきました。お土産としても、ママカリの酢漬けなどがよく売られています。
もう一つ、岡山名物の呼び声が高いのがサワラ。徳川8代将軍吉宗の時代の記録にも、備前・備中国の産物と記されています。かつては春に岡山県沖の備讃瀬戸に産卵のために集まってきましたが、現在は残念ながら漁獲量が減少。しかし、近年、岡山では県や業界団体が中心になって、サワラ料理を岡山名物として全国にアピールする活動を続けています。味噌漬けが一般的ですが、岡山では新鮮なサワラを刺身で食べることが好まれます。濃厚でいて上品な旨味、柔らかな身をぜひ味わってみてください。